企画展「継承のしさく―小森はるか+瀬尾夏美―」
東日本大震災の発災から月日が経過し、当時の記憶がない世代や、震災を経験していない土地からの人々を交えた地域の営みが、すでにはじまっています。
風景からかつての街並みや暮らしぶりを思い起こすことが難しくなりゆく現在、国内観測史上最大の震災について、その体験を語り直し、誰かに渡していくことがもうすでに求められているのではないでしょうか。
この企画展は、アートユニット・小森はるか+瀬尾夏美が岩手県陸前高田市で制作した映像作品「二重のまち/交代地のうたを編む」(2019年)をベースにします。小森はるか+瀬尾夏美は、陸前高田市の復興過程を目の当たりにするなかで、生活の落ち着きとともに、震災体験の語りが“当事者”から“当事者ではない(と思っている)人たち”へと引き継がれる機会が必要になってきていると感じ、2018年から両者の出会いの場づくりを始めました。
今回の開催にあたり、陸前高田での映像制作と類似する手法を用いて、仙台市東部沿岸地域の元住民と、仙台市域の若者たちがともに歩くフィールドワーク、そして仙台市民がお互いの声を聞き合うワークショップを新たに行いました。この企画展では、その記録もあわせて展示します。仙台における震災の語り継ぎについて思索する場づくりの試みと、その記録を展示内に含んだ「継承のしさく*」シリーズ第一弾です。
*「継承のしさく」はシリーズとして、震災の記憶を伝える手法を「思索」し、さまざまな角度からその継承を「試作」するひとつの「施策」です。表現活動を通じた継承を考えるとき、物語や身体表現、音楽などといったある種の「詩作」によって、伝わってきたもの、伝わっていくものがあるのではないかと考え、今後も「継承のしさく」シリーズとしてさまざまな企画を展開します。